オリンピックシーズン フィギュアスケート女子シングルを振り返って
話は遡ること11年前。
中野友加里さんは、1985年生まれの元フィギュアスケート選手で、2009年の全日本選手権で、バンクーバーオリンピックの代表3枠を争う強化選手でしたが、僅差で出場を果たすことが叶わず、2010年に現役を引退しました。
今回、Youtubeの自身のチャンネルで技術的な点数の分析をして下さいました。
当時、彼女が代表枠を争うことになった鈴木明子選手の演技とともに全日本選手権FSを振り返ってみてみることにしました。
まず、中野友加里選手はSPで鈴木明子選手と僅差でリードすることができました。
中野選手の表情からは緊張感が伝わってきます。
演技後も反省点が頭を過るのか、首をかしげています。
鈴木明子選手はSP3位で中野選手に後れを取っている状態からのFSになります。
滑走順で言うと中野選手よりも後に滑る形になった訳ですが、彼女のスケーティングからはプレッシャーよりも楽しさが伝わってきます。
肝心な試合にもかかわらず、こけてしまって思わぬ減点があった。
それにもかかわらず、演技を終え満面の笑みで会場に手を振るのです。
結果、僅差で鈴木明子選手が代表枠を勝ち取ることができたのですが、
何故、彼女はこれほどまでに、このような状態でも、スケートを楽しめるのか。
鈴木明子選手が楽しそうにスケートを滑る訳を分析してみました。
[:contents]自分の衣装が好き
[:contents]使用曲が好き
[:contents]振付が好き
私はそもそも、鈴木明子選手がこのFSの演技を会場のお客さんの前で演技できること自体が楽しみなのではないかと思っています。
それに次いで、鈴木明子選手の戦績は当シーズン、上り調子です。
思い返せば、中野友加里選手は当シーズン、故障なども有り、来たる全日本選手権までにGPSで表彰台に上るなどの戦績を上げることができなかったといえます。
その意味で、中野選手にとってこの戦いは「追いかける形の戦い」だった訳です。
それでは、「追いかける形の戦い」を勝ちぬくには、どうしたらいいのでしょう。
これまで、オリンピックシーズンには様々なドラマを全日本選手権で見てきました。
平昌オリンピックでは、代表枠2枠をかけて、宮原知子選手、坂本花織選手が勝ち取り、樋口新葉選手、三原舞依選手、本郷理華選手、本田真凛選手が涙を飲みました。
この時の宮原選手は疲労骨折により出場を危ぶまれたのですが、それまでが調子が良かった為、調子を取り戻すことができました。
彼女もスピンを武器とする選手ですので、中野友加里選手とその点では同じですね。
平昌オリンピックをかけた全日本選手権では強さを発揮しましたが、
しばらく続いた女王の座を逃した瞬間の落胆の表情には心が痛みました。
その後も、ジャンプを基礎からやり直す為、海外を拠点に練習を開始しますが、思うように問題を克服できず、2019全日本選手権では表彰台にのぼることができなくなってしまい、「もうどうしたらいいのかわからない。」とコーチに泣きついたと言われています。
しかし、彼女は楽しむことを第一に考え、2020全日本選手権で再度表彰台に登ることができました。
今期もオリンピックシーズン。
トリプルアクセルと4回転ジャンプを武器とする紀平梨花選手が故障により調子を落としている。
世界選手権で表彰台を逃し、国別対抗戦に出た時も、自身の失敗を引きづり「なにも楽しくない。」と答えたと言われています。
勝ち負けに執着すると、楽しくなくなり、本来の調子を失ってしまうのではないかと思ってしまいます。
その点、三原舞依選手はアイスショーを見る限り、スケートを楽しんでいる。
ちょっと気がかりなのは、樋口新葉選手。彼女も自分を追いつめてしまうところがある。楽しんでほしい。
その点、中京大フィギュアスケート部は、いつも楽しそうでいいですね。
結局、「追いかける形の戦い」に勝つ方法としての解決策は見当たりませんでした。
ただ、楽しむことは、本当に大切だと思います。